Amazon Forecastにwhat-if分析機能が追加:関連する時系列データが変化した際の動きを分析可能になりました

Amazon Forecastにwhat-if分析機能が追加:関連する時系列データが変化した際の動きを分析可能になりました

Clock Icon2022.09.14

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

こんちには。

データアナリティクス事業本部機械学習チームの中村です。

今回はAmazon Forecastの新機能であるwhat-if分析についてご紹介します。

AWS公式ブログでは以下の記事で紹介されています。

Amazon Forecastの概要

まずAmazon Forecastの概要をおさらいします。

Amazon Forecastは時系列データを予測するサービスです。

入力できる情報には以下の3種類があります。

  • TARGET_TIME_SERIES(TTS)
    • 予測対象(ターゲット)となる時系列データ。(例: 需要予測の場合は需要のデータ)
    • 時系列で変化しない情報(例: 店舗ID)を含めることで分析軸を追加可能。
  • RELATED_TIME_SERIES(RTS)
    • 関連する時系列データ。(例: 需要予測の場合は価格など)
    • TTSに付加した分析軸はこちらにも追加が必要。
  • ITEM_METADATA
    • アイテムのメタデータを追加することが可能。(例: 商品のブランドなど)

TTSは全てのケースでおいて必須のデータですが、what-if分析ではRTSも必要となります。

what-if分析とは

what-if分析はRTSが変化した際に、TTSがどのように変化するかを分析するための機能です。

例えば「需要予測」の場合は、「需要(TTS)」とは別の関連する時系列データである「価格(RTS)」を過去に遡って下げたと仮定した場合に、 予測した「需要(TTS)」がどの程度変化するのかを分析することが可能になります。

また、Amazon Forecastにかかる費用は以下の通りです。

  • データのインポート
  • Predictorのトレーニング
  • 予測したデータポイント数
  • 予測の説明

このうち、What-if分析はデータポイントを予測するため、「予測したデータポイント数」の部分にコストが掛かってくるのでご注意ください。

(実際本記事の通りに実行すると、60ドル程度は必要になりますので留意頂ければと思います)

what-if分析のトライ

今回関連するリソースは以下のような階層構造になっています。

What-if分析に相当するのは、オレンジ部分で、一旦Forecastまで作成した上で構築する必要があります。

S3の準備

事前にバケット作成しておきます。(今回は以下)

  • バケット名: sample-nakamura-2022-09-09-forecast

以下のGitHubに、公開されているデータセットがあります。

ここから以下の2つのファイルをダウンロードします。

  • consumer_electronics_TTS.csv
  • consumer_electronics_RTS.csv

これらをS3のそれぞれアップロードしておきます。(今回は以下)

  • s3://sample-nakamura-2022-09-09-forecast/target/consumer_electronics_TTS.csv
  • s3://sample-nakamura-2022-09-09-forecast/related/consumer_electronics_RTS.csv

Dataset group作成

「View dataset groups」を押下し、データセットグループ一覧を表示します。

「Create dataset group」を押下します。

Dataset groupの情報を以下のように入力し、末尾の「Next」を押下します。

  • Dataset group name: sample_nakamura_what_if_dsg
  • Forecasting domain: Custom

Dataset(ターゲット側)作成

Datasetの情報を以下のように入力します。

  • Dataset name: sample_nakamura_what_if_tts
  • Frequency of your data: 1 months
  • Data schema: JSON builderをチェック

またJSON schemaには以下を設定し、Timestamp formatにはyyyy-MM-ddを設定します。

{
    "Attributes": [
        {
            "AttributeName": "item_id",
            "AttributeType": "string"
        },
        {
            "AttributeName": "store_id",
            "AttributeType": "string"
        },
        {
            "AttributeName": "timestamp",
            "AttributeType": "timestamp"
        },
        {
            "AttributeName": "target_value",
            "AttributeType": "float"
        }
    ]
}

Dataset importの設定は以下とします。

  • Dataset import name: sample_nakamura_what_if_tts_import
  • Select time zone: Do not use time zone
  • Import file type: CSV
  • Data location: s3://sample-nakamura-2022-09-09-forecast/target/consumer_electronics_TTS.csv

IAM roleは、Create a New Roleを選択すると以下のダイアログがでるので、

Specific S3 bucketsを以下のように設定して、「Create role」を押下します。

  • sample-nakamura-2022-09-09-forecast

ちなみに作成されるロールにアタッチされるポリシーは以下のようになります。

(書き込み権限もあるので、後述のエクスポート時もこちらを使用していきます。)

{
    "Version": "2012-10-17",
    "Statement": [
        {
            "Action": [
                "s3:ListBucket"
            ],
            "Effect": "Allow",
            "Resource": [
                "arn:aws:s3:::sample-nakamura-2022-09-09-forecast"
            ]
        },
        {
            "Action": [
                "s3:GetObject",
                "s3:PutObject",
                "s3:DeleteObject"
            ],
            "Effect": "Allow",
            "Resource": [
                "arn:aws:s3:::sample-nakamura-2022-09-09-forecast/*"
            ]
        }
    ]
}

ロールが作成されるので、その後「Start」を押下します。

その後Importが開始されます。

Dataset group一覧から作成したDataset groupを選択すると、

直後は「Create pending」となっているため、以下のようにActiveとなるまで待ちます。

Dataset(関連データ側)作成

what-if分析には、Related time series dataが必要となるため、上記の画面で「Import」を押下します。

Datasetの情報を以下で入力します。

  • Dataset name: sample_nakamura_what_if_rts
  • Frequency of your data: 1 months
  • Data schema: JSON builderをチェック

またJSON schemaには以下を設定し、Timestamp formatにはyyyy-MM-ddを設定します。

{
    "Attributes":[
        {
            "AttributeName":"item_id",
            "AttributeType":"string"
        },
        {
            "AttributeName":"store_id",
            "AttributeType":"string"
        },
        {
            "AttributeName":"timestamp",
            "AttributeType":"timestamp"
        },
        {
            "AttributeName":"price",
            "AttributeType":"float"
        },
    ]
}

Dataset importの設定は以下とします。

  • Dataset import name: sample_nakamura_what_if_rts_import
  • Select time zone: Do not use time zone
  • Import file type: CSV
  • Data location: s3://sample-nakamura-2022-09-09-forecast/target/consumer_electronics_RTS.csv

IAM roleは、先ほどと同じロールを指定します。(データ格納先のバケットは同じの場合)

その後「Start」を押下します。

Importが始まるので、先ほどと同様にRelated time series dataが「Active」となるまで待ちます。

Predictor作成

次にPredictorを作成します。先ほどの画面で、Predictor trainingの横にある「Start」を押下します。

Predictor settingsは以下の値で設定します。

  • Predictor name: sample_nakamura_what_if_predictor
  • Forecast frequency: 1 month(s)
  • Forecast horizon: 3
  • Forecast dimensions: store_id
  • Forecast quantiles:
    • Forecast quantile: Forecast quantile 1, Value: 0.10
    • Forecast quantile: Forecast quantile 2, Value: 0.50
    • Forecast quantile: Forecast quantile 3, Value: 0.90

他はデフォルトのまま、ページ下部の「Create」を押下します。

すると、Trainingが開始され、Predictor一覧で残り時間が表示されます。

(今回は2時間程度必要でした)

Forecast作成(予測の実行)

Predictor一覧から作成したPredictorを選択すると、「Create forecast」ボタンがありますので、

そこで予測を実行します。

Forecast detailsは以下の値で設定します。

  • Forecast name: sample_nakamura_what_if_forecast
  • Predictor: sample_nakamura_what_if_predictor
  • Item for generating forecasts: All Items

作成が開始されるので、結果を待ちます。

(残り時間が表示され、今回は40分程度かかりました)

作成が終わったら、forecastを選択し、以下の「Create forecast export」を押下します。

Export detailsで以下を入力します。

  • Export name: sample_nakamura_what_if_forecast_export
  • IAM role: インポート時に作成したものと同じロールを指定
  • Export file type: CSV
  • S3 forecast export location: s3://sample-nakamura-2022-09-09-forecast/export

ページ下部の「Create Export」を押下して完了を待ちます。

what-if分析の作成

ダッシュボード画面からwhat-if分析が作成できます。「Explore what-if analysis」を押下します。

「Create」を押下します。

What-if analysis detailsを以下のように設定します。

  • What-if analysis name: sample_nakamura_what_if_analysis
  • Select forecast: sample_nakamura_what_if_forecast
  • Item selection: Select all items

ページ下部の「Create what-if analysis」を押下します。

しばらく経過すると、What-if analysisのStatusがActiveとなります。

what-if分析のForecast作成(予測の実行)

上記の画面から、What-if forecastの「Create」を押下して進みます。

What-if forecast detailsに以下を入力します。

  • What-if forecast name: sample_nakamura_what_if_analysis_forecast
  • What-if forecast definition method: Use transformation functions
  • Transformation function builder:
    • Action
    • Operation: MULTIPLY, AttributeName: price, Value: 0.90
    • Conditions:
      • AttributeName: timestamp, AttributeValue: 2019-09-01, Condition: GREATER_THAN

上記の設定内容は、2019-09-01以降のpriceデータに0.9を乗算した場合に、

Targetがどのように変化するかを、What-if分析するような記述となっています。

なお、数式で表現できないような値を設定したい場合は、

definition methodに「Define the what-if forecast with a replacement dataset」を選択し、

データを置き換えたRelated Time SeriesデータをS3からImportすることで、What-if分析をすることが可能です。

入力をしたらページ下部の「Create」を押下します。

すると以下のように作成中となるので、しばらく待ちます。

StatusがActiveとなったら、ページ下部に移動し、以下のWhat-if forecast exportで

「Create export」を押下します。

インポート時に作成したものと同じロールを指定

Export detailsで以下を入力します。

  • Export name: sample_nakamura_what_if_analysis_forecast_export
  • What-if forecasts: sample_nakamura_what_if_analysis_forecast
  • S3 forecast export location: s3://sample-nakamura-2022-09-09-forecast/export_what_if
  • IAM role: インポート時に作成したものと同じロールを指定

ページ下部の「Create Export」を押下して完了を待ちます。

結果の比較

エクスポート結果をダウンロードして比較していきます。

aws s3 cp s3://sample-nakamura-2022-09-09-forecast/export ./export --recursive
aws s3 cp s3://sample-nakamura-2022-09-09-forecast/export_what_if ./export --recursive

可視化のため、Pythonのコードを準備しました。

import pathlib
import pandas as pd
from matplotlib import pyplot as plt
import seaborn as sns
sns.set(style='darkgrid')
from datetime import datetime

# 学習データ読み込み
tts_df = pd.read_csv("./consumer_electronics_TTS.csv")

# 推論結果読み込み
def read_csv_files(src_path: str):
    df = pd.DataFrame([])
    for p in pathlib.Path(src_path).glob("*.csv"):
        # print(p)
        _df = pd.read_csv(p)

        if len(df)==0:
            df = _df
        else:
            df = pd.concat([df, _df], axis=0)
    df = df.sort_values(['item_id', 'store_id', 'date']).reset_index(drop=True)
    df['yyyy-mm-dd'] = [i[:10] for i in df['date']]
    return df
base_df = read_csv_files("./export")
whatif_df = read_csv_files("./export_what_if")

# 描画
query_str = 'item_id == "item_001" and store_id == "store_001"'

fig, axes = plt.subplots(2, 1, figsize=(10, 6), dpi=100, sharex="col")
fig.suptitle(query_str)

ax = axes[0]
sns.lineplot(data=tts_df.query(query_str), x='timestamp', y='demand', marker="o", ax=ax, label="train(target)", color=colors[0])
sns.lineplot(data=base_df.query(query_str), x='yyyy-mm-dd', y='p50', marker="o", ax=ax, label="forecast(p50)", color=colors[1])
sns.lineplot(data=whatif_df.query(query_str), x='yyyy-mm-dd', y='sample_nakamura_what_if_analysis_forecast_p50', marker="o", ax=ax, label="what-if-forecast(p50)", color=colors[2])
ax.set_ylim([100, 500])

ax = axes[1]
sns.lineplot(data=rts_df.query(query_str), x='timestamp', y='price', marker="o", ax=ax, label="train(related)", color=colors[0])
sns.lineplot(data=rts_df.query(query_str).query('timestamp > "2019-09-01"'), x='timestamp', y='price_whatif', marker="o", ax=ax, label="what-if", color=colors[2])
[i.set_rotation(90) for i in ax.get_xticklabels()]
ax.set_ylim([40, 150])

plt.tight_layout()

plt.tight_layout()

結果は以下のようになります。(item_id: "item_001", store_id: "store_001"の場合)

上のdemandが予測対象となる時系列データで、下のpriceがRelatedな時系列データとなる情報です。

demand, priceそれぞれ青線で描かれている箇所がPredictorの学習に使用されています。

オレンジ線は、通常のPredictorのForecast結果(p50)で、これがベースラインとなります。

グリーン線がwhat-if分析に関するデータで、priceが0.9掛けだったら、

demandにどのような影響がでるかを確認できます。

影響としては、priceが低下すると、demandが上昇するといったような予測をしているようです。

これは、学習に使用したdemandとpriceが逆相関を持っていることをうまく反映しています。

この結果は、item_id、store_idごとにそれぞれ影響度を確認することが可能です。

興味のある方は他のケースも確認してみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

what-if分析で、過去を振り返って様々な仮説を検証することができるので、分析の幅が広がりそうですね。

Amazon Forecastをご利用の方は是非お試しください。

こちらの記事がAmazon Forecastを活用する際の参考になれば幸いです。

Share this article

facebook logohatena logotwitter logo

© Classmethod, Inc. All rights reserved.